転職前後の会社それぞれが実施している、企業型DCを含めた老後資産に関する福利厚生制度に大きな違いがありました。
その違いが、ぽっかくんの老後資産における企業型DCの位置付けを大きく変化させてしまったため、いままで以上に企業型DCの理解が必要になりました。
企業型確定拠出年金(企業型DC)の概要
企業型DCは、企業が掛⾦を毎⽉積み⽴て(拠出)し、企業型DCの加⼊者である従業員が⾃ら年⾦資産を運⽤する制度です。厚生年金基金、確定給付企業年金等の確定給付型年金は年金給付額が約束されているのに対して、企業型DCは掛金とその運用収益の合計額に基づき年金給付額が決定されます。
2017年から20歳以上60歳未満のほとんどの⼈が加⼊できるようになった個⼈型確定拠出年⾦(iDeCo)は、iDeCoの加⼊者である個人が掛⾦を拠出し、⾃ら年⾦資産を運⽤する制度です。
出典:厚生労働省/一般社団法人投資信託協会ホームページ
企業型DCを実施している企業の従業員は、企業が拠出した掛⾦を元手に、⾦融商品の選択、資産配分の決定等の年⾦資産の運⽤を行います。そして、60歳以降に、積み⽴ててきた年⾦資産を⼀時⾦又は年⾦の形式で受け取ります。ただし、積み⽴てた年⾦資産は、原則60歳まで引き出すことはできません。
企業が各従業員に拠出する企業型DCの掛⾦の額は、役職等に応じて決定されるのが一般的です。しかし、企業が各従業員に拠出する掛⾦の額にかかわらず、企業型DCの掛⾦の上限額(拠出限度額)は、それぞれの企業が実施している福利厚生制度に基づき設定されています。
また、「マッチング拠出」制度により、企業が拠出する掛⾦に、従業員が掛⾦を上乗せすることができます。マッチング拠出の掛⾦の上限は、(1)従業員が拠出する掛⾦の⾦額が、企業が拠出する掛⾦の⾦額を超えないこと、(2)企業が拠出する掛⾦と、従業員が拠出する掛⾦の合計額が、拠出限度額を超えないこと、という2つの要件を満たす⾦額です。
企業型DCには、3つの税制優遇措置があります。
- 企業型DCの運⽤で得た利益は、全額⾮課税となる
- 60歳以降に受け取る年⾦資産は、⼀時⾦の場合「退職所得控除」、年⾦の場合「公的年⾦等控除」を受けられる
- マッチング拠出を利⽤した場合、従業員が拠出する掛⾦は、全額所得控除の対象となる
老後資産における企業型確定拠出年金の位置付け
企業型DCを実施している会社の福利厚生制度には4つのタイプがあり、公平性を確保するために、それぞれのタイプで企業型DCの拠出限度額が異なります。
拠出限度額 | 確定給付型年金 | iDeCo |
月額55,000円 | × | × |
月額27,500円 | ○ | × |
月額35,000円 | × | ○ |
月額15,500円 | ○ | ○ |
また、各企業は企業型DCの運営管理を行う⾦融機関である「運営管理機関」を選択できます。企業型DCで運⽤する商品は、運営管理機関が独⾃に選択ができるので、それぞれの企業で企業型DCの運用商品も異なります。
転職前の会社には確定給付型年金の制度があったので、企業型DCの拠出限度額は月額27,500円でした。しかし、転職後の会社には確定給付型年金の制度がなかったため、企業型DCの拠出限度額は月額55,000円とアップした一方で、まったく年金給付額が約束されなくなったので、老後資産における企業型DCの重要性が大きくなってしまいました。さらに、転職前の会社から転職後の会社への企業型DCの移管手続きにより、転職前の会社の企業型DCで運用していた資産は⼀度現⾦化されてしまいましたので、あらためて企業型DCに関する運用方針の見直しが必要になりました。